2016年7月〜12月まで、琉球新報連載エッセイ「落ち穂」にて、
当店のM子店長こと砂川真樹子が執筆しました。
第6回目は2016年9月8日(木)掲載。
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十五夜の笛
旧暦8月15日の夜、宮古島の集落では十五夜行事が行われる。実家の集落では、豊年祈願祭「野原マストリャー」が催される。「マストリャー」とは「枡(ます)を取る」という意味で、穀物が税だった時代に貢祖を完納した喜びと来年の豊作を祈って祭りをするようになった。200年の歴史があり、国の選択無形民俗文化材に保存、継承されている。
祭りの夜、男たちはエイサーの装いで頭に紫色のサージを巻く。「サッサー」と威勢よく声を張り上げブンミャー(公民館)に集まる。勇壮な棒振り方言歌に合わせ裸足(はだし)で踊る。女たちはクバ扇と四つ竹を持ち「抱き踊り、なぎ踊り」を優雅に踊る。最後は男女共輪になり、巻き踊りとクイチャーで締める。拍子を取るのは鉦(かね)と笛だ。
家庭では、厄除(よ)けの意味を込めて俵状の白い餅にゆでた島黒小豆をまぶして作る「ふきゃぎ」の団子を食べる。運営する市場のお店でも夏前に収穫された黒小豆が店頭に並ぶ。今年は豊作だ。
子どもの頃は、ふきゃぎを食べると十五夜祭りにワクワクした。集落の子ども会で、野原マストリャーを九州地区の伝統芸能祭で披露する機会があり当時、私は笛を吹くことになった。木の横笛で最初の音を出すのが難しく、何度も練習を繰り返した。大人から直接。声の音程を聞き耳で覚える。単調な音階だが、踊りの合いの手になる大切な役割だ。笛を吹きながら何だか誇らしかった。
幼馴染(なじ)みの中には、一度は島を離れ、戻って集落に住む者がいる。集落には住まないが、行事があると参加する者もいる。昨今、若者の地域離れと少子化が社会問題となっているが、長男が親と同居するという慣習もなくなりつつある。ほどよ距離を保ちつつ地域と付き合うスタイルも心地いい。
私も、帰郷してからは十五夜の行事を見に行く。今の人が踊る姿に遠い先祖らの姿が重なる。苦境を乗り越えてきた「アララガマ精神(不屈の精神)」を忘れるなと訴えているようで心が熱くなるのだ。私もまた、先祖らと踊ってみたいな。
さあ、今年も十五夜だ。満月の下、笛の音が鳴り響く。
【執筆者プロフィール】
砂川 真樹子(すながわ・まきこ)
1979年宮古島生まれ。
新聞記者をした後、島を離れ、雑誌ライターなどを経験。
宮古島市公設市場で夫婦で「385じま△ストア」を経営。
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