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2016年7月〜12月まで、琉球新報連載エッセイ「落ち穂」にて、
当店のM子店長こと砂川真樹子が執筆しました。
第7回は2016年10月20日(木)掲載。

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宮古島は山も川もなく平坦な島だが、湧水(ゆうすい)が豊富だ。島の生活用水の70%は、東海岸沿いにある2カ所の湧水から水を汲み上げまかなっている。農業用水は、海へと流れる雨水をせき止める地下ダムに頼っている。

今では家の蛇口をひねれば当たり前のように水が出るが、80年前まで島人の生活の営みを支えてきた水源は井戸(ガー)であった。集落には、洞窟式の洞井(ドゥガー)や階段を降りて湧水点まで行く降り井(ウリガー)という井戸がある。井戸の深さは深いところで数十㍍もあるが、水汲みの仕事は女性や子どもの日課だった。水が入った桶(おけ)を担ぎ、水瓶(みずがめ)を頭に乗せて集落と井戸を行き来する過酷な労働を毎日続けていた。

井戸のある場所は女性の交流の場でもあり、時にはアマグイザー(雨乞い座)という祈る場でもあった。水の神に、感謝と豊潤を祈る祭祀(さいし)は各集落で継承されている。

私の集落でも、湧水に参拝し繁栄を祈る「サーツキ○願い(ニガイ」という神行事がある。旧暦9月の秋の実りの時期に一日かけて行う。ツカサと呼ばれる神に仕える女性が湧水を参拝した後、水を汲み上げ神座に供えるお茶や清めの水として使う。その日は、集落の人々が参拝に訪れる。神座はウプ御嶽(うたき)と呼ばれ公園内にあり、湧水は公園内の石畳を降りていくと切り立った岩石の下に沸いている。湧水は、集落の人のンマリガー(生まれ井戸)と呼ばれている。ンマリガーは人の生死と深く結びついている。

集落は自衛隊のお膝元にあり、実は基地の中にも井戸がある。母がツカサの年に同行したが、神秘的な雰囲気で圧巻であった。ビデオを回していたが、急に電源が落ち何も映っていなかったという不思議な体験も。畏れ多いと感じた出来事だった。

島の水は硬水なので飲用水は軟水を購入する人がほとんど。10㍑の水を両手に持ち4階の自宅まで階段で上がるのにひーこらしている。そんな私はまるで昔の水汲み婦人。環境は違えども今も昔も何だか変わらないかもねーと思うのは私だけか。水に感謝。先人に感謝。

 

【執筆者プロフィール】

砂川 真樹子(すながわ・まきこ)
1979年宮古島生まれ。
新聞記者をした後、島を離れ、雑誌ライターなどを経験。
宮古島市公設市場で夫婦で「385じま△ストア」を経営。

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