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2016年7月〜12月まで、琉球新報連載エッセイ「落ち穂」にて、
当店のM子店長こと砂川真樹子が執筆しました。
第4回目は2016年8月12日(金)掲載。

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珊瑚礁の庭

宮古島は、珊瑚(さんご)礁が隆起しできた島々で、主に琉球石灰岩から成り立つ。石灰岩の地質と川がないということもあり、海が濁りにくく透明度が高いといわれる。また、島の水は海と珊瑚礁の石灰岩の影響を受け、カルシウムやミネラルを豊富に含む。
その名残は、島の内陸でも見られる。珊瑚礁が化石化し灰色の岩のような石が点在する原っぱや畑、民家の庭に植物と共生しながら島の大地に根付いている。
近年、ある自宅の石庭がパワースポットと知られ観光地化されている。庭主の男性は、テコの原理で地中にある石灰岩を掘り起こし、30年かけて石庭を作った。庭は、宮崎駿の映画に出てくるジブリの森のような不思議な空間だ。
その石庭のある集落からほど近い集落に私の実家があるのだが、庭には石庭と同じように石灰岩がゴロゴロ。父の話では曾祖父がその土地に家ごと引っ張ってきて住み始め、さまざまな生業をしながら、ヤブ医者のようなこともしていたという。野草や薬草を使って、家に訪れる人の手傷や腹痛などの症状を治癒したらしい。農薬もない時代、栄養を豊富に含む珊瑚石灰岩から滴り落ちる雨水を受けた庭は太陽と水、大地の持つ自然の力で、強い生命力を含み今の島の人も知らない野性味ある植物に溢れていたのだろう。
庭は父に引き継がれた。むきだしの石灰岩のある庭でラジオを横に、黙々と庭作業をこなす父の背中が忘れられない。幼少期の父は、実母の実情で曾祖父の養子になった。12年前に他界した父を思い返しながら、父は自分の人生をどう思っていたのだろうかと心が巡るが今は、父が全うした人生を讃(たた)えたい。母に受け継がれた庭は、石灰岩を優しく包み込むように緑と花が溶け合う、女性らしい癒しのガーデンになっている。
その庭で今年、父の命日前にブライダル撮影を行った。生まれ育った珊瑚礁の庭は、先祖が築いてきた大切な場所。そして、生き続ける場所。晴天の下、曾祖父、父、庭の神様から、静かな祝福と微笑をいただいたような幸せな気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【執筆者プロフィール】

砂川 真樹子(すながわ・まきこ)
1979年宮古島生まれ。
新聞記者をした後、島を離れ、雑誌ライターなどを経験。
宮古島市公設市場で夫婦で「385じま△ストア」を経営。

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