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2016年7月〜12月まで、琉球新報連載エッセイ「落ち穂」にて、
当店のM子店長こと砂川真樹子が執筆しました。
第7回は2016年10月6日(木)掲載。

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まりの香り

先月彼岸入りの日、実家で飼っていた猫の「まり」が息をひきとった。いつものベランダの場所で静かに旅立った。老衰のようだった。その日の夕方、母と家の裏の畑でまりを弔った。その場所は、シロバナセンダングサの白い花が咲いていた。
亡くなる数日前、まりを抱っこしたのだが、妙に軽かったことに驚いた。私が実家に寄るといつもご飯をねだっていたが、その日はよそっても食べず水だけ飲んで、目の前が庭のベランダのいつもの場所にペタリと座り込んだ。「まりー」と呼ぶと「ンー」と低い声で鳴いた。それがまりとの最後の思い出になった。
まりは三毛猫のメスで、ヨチヨチ歩きの時に母の知人がもらい手を捜していると連れてきた。雨の中、知人宅裏の排水溝で数日間鳴いていたという。尻尾をピンと立て少し警戒しながらも庭でピョンピョンはねて遊ぶので、その日から私たちの家族になった。私の手のひらにちょこんと乗った姿が手毬(てまり)のように可愛(かわい)かったので「まり」と名付けた。
野良猫の本能でいつかはいなくなるかもしれないと思っていたが、1度の出産後も18年間実家に住み続けた。出産のエピソードがある。まりが産気づいた時、母と妹が居合わせた。気が立つといけないと思い家族とは離れた車庫に出産場所を作り、1匹目が生まれるのを見届けてから家の中に戻った。すると、2匹目の頭がもう見えているという姿のまま家の中に現れ、母と妹を呼びように鳴いたという。慌てて二人は車庫に戻り、7匹の子猫が生まれるのを手伝った。猫は出産を人に見せないというが、初めての出産にまりも人と同じように不安だったのだろうか。元気な頃は気が強く、縄張り争いでオス猫を撃退していた。
まりは、母が庭作業をしていると必ず母のそばにいた。花のある庭をゆっくりと歩くまり。抱っこすると、ほのかな花の香りがした。庭を見るとまりがいるようで探してしまう。いつも当たり前のようにいた家族の一員がいなくなると寂しいね。
まり、私たちの家族でいてくれてありがとうね。

【執筆者プロフィール】

砂川 真樹子(すながわ・まきこ)
1979年宮古島生まれ。
新聞記者をした後、島を離れ、雑誌ライターなどを経験。
宮古島市公設市場で夫婦で「385じま△ストア」を経営。

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